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大阪高等裁判所 平成11年(ネ)3122号 判決 2000年2月09日

和歌山県海南市野上新二〇一番地の九

控訴人(被告)

株式会社小久保工業所

右代表者代表取締役

小久保好章

和歌山県海南市野上新二八九番地

控訴人(被告)

小久保好章

右両名訴訟代理人弁護士

川村和久

梅本弘

片井輝夫

池田佳史

池野由香里

嶋津裕介

右補佐人弁理士

杉本勝徳

奈良県大和高田市大字野口一八一番地

被控訴人(原告)

進弘繊維株式会社

右代表者代表取締役

河村光祥

右訴訟代理人弁護士

中嶋邦明

平尾宏紀

右補佐人弁理士

鎌田文二

東尾正博

鳥居和久

田川孝由

主文

一  本件各控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。

二  被控訴人の請求を棄却する。

三  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

第二  事案の概要

次に付加する他は、原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」「第三 争点及び争点に対する当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。

【争点一に関する控訴人らの補充主張】

1  本件考案のクレームに用いられた「上端」「周縁」という用語の意義は、国語辞典によれば、それぞれ「上のはし」「まわり。ふち」というもので二義はない。クレームの文言解釈においては、文言の本来の語義から通常予想される範囲を超えて実質的な解釈をすることは許されないところ、本件考案のクレームにつき、口ゴム部の下方に十分な筒形網体が存在さえすれば、口ゴム部が「上端」に設けられていると評価しうるというのは、あまりに本来の語義から離れており、実質的な解釈にすぎるもので許されない。

2  控訴人商品は、ゴム糸を「上端」部ではなく筒体中央部やや上方に編み込むことによって、その上の部分が容器に密着しないエプロン部を形成し、そこを持つことにより取り外しが容易となる作用効果を発揮する。

右の作用効果は、本件考案に対する付加的な作用効果ではなく、控訴人商品はごみ袋の「上端」の構成に関し全く別の発想で臨んでいるというべきであるから、本件考案の構成要件Aを充足しない。

第三  当裁判所の判断

一  当裁判所も、被控訴人の本件請求は原判決認容の限度で理由があるものと認定判断する。その理由は、次に付加する他は、原判決「事実及び理由」中の「第四 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

【争点一に関する控訴人らの補充主張について】

控訴人らの補充主張は、要するに、控訴人商品の口ゴム部は筒形網体の上端周縁に設けられているとはいえない上、右口ゴム部の上方に設けられたエプロン部は、本件考案とは別異の技術思想に基づき創作されたもので、本件考案の構成要件Aを充足しないから、控訴人商品は本件考案の技術的範囲には属さないということにある。

しかし、控訴人商品にみられるエプロン部は、全長約一七cmの筒形網体の最上端部から口ゴム部までの約二cm幅のものにすぎないから(原判決一七頁の4参照)、口ゴム部が果たす機能等に照らすと、右の口ゴム部が筒形網体の上端周縁に設けられていると評価し得ることは原判決の説示するとおりである上、控訴人らの主張する別異の技術思想というのも、控訴人商品を容器から取り外す際に手に持ちやすいというにすぎない。

そして、控訴人商品が本件考案の作用効果のすべてを奏するものであることは、原判決一七頁九行目から同一九頁九行目までに記載のとおりであり、控訴人らの主張する別異の技術思想によって本件考案の有する作用効果を何ら阻害、変容させてはいない。

そうすると、右エプロン部が付加形成されていることによって本件構成要件Aとは別異の構成となっているとみることはできず、控訴人商品は本件考案の構成要件Aを充足するものであると認めることができる。

控訴人商品が本件構成要件B・Cを充足することは争いがないから、控訴人商品は、本件考案の構成要件のすべてを充足し、その技術的範囲に属するものといわざるを得ない。控訴人主張の効果が付加されることを理由に右の結論を左右することはできない(控訴人商品は、本件考案の技術思想の全てを不可避の前提として成立しているもので、本件考案を利用するものに他ならない。)。控訴人らの補充主張は採用できない。

二  してみると、被控訴人の請求を控訴人小久保に対する廃棄請求を除いて認容した原判決は相当であって、本件各控訴は理由がなく棄却すべきである。

よって、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成一一年一一月一六日)

(裁判長裁判官 鳥越健治 裁判官 小原卓雄 裁判官 川神裕)

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